2025.01.01

がんを先制(予防)する! 3)がんの進行を先制する(進行予防)

船戸 崇史
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 皆様あけましておめでとうございます。激動の2025年が始まりました。われわれ医師会員は、ついこの前まで今年を「2025年問題」として刻印しています。すべての段階の世代の人が75歳以上の後期高齢者になる年なんですね。私たちの一生に支払う医療保険の半額をその後に使われると言います。つまり今後急速に人口減少期に入る日本は介護医療費ともに大きく必要となるんですね。
 日本人の死因を見ると急速に「老衰」が増えていますが、相変わらずがんが1位です。ですから、今までこの通信をお読みいただいている人は、すでにご関心はあると思いますが、私たちもいつかは死ぬと言う事を「意識しない確信」として持っていて欲しいと思います。その死因がまさにこの統計で、がん>心臓病>老衰>脳血管疾患>肺炎>事故>自死・・だと言う事なんですね(図1)。どれも嫌だけど、あなたもその内このどれかで「逝く」ことになります。
 しかし、当面がんは死因1位の座から下がりそうにはないですね。


図1 厚生労働省 人口動態統計より日本人の死因

 さて、ではその準備の続きを始めましょう。
 これまで2回ほど通信では、「がんを先制(予防)する」という大テーマについて一緒に考えてきましたね。この大テーマをさらに4つに分けました。①「がん初発を先制(予防)する」それでもがんだと診断された場合に②「がん再発を先制(予防)する」。しかし、それでも再発してしまった場合に③「がんの進行を先制(予防)する」です。ここで改めて、なぜがんを先制(予防)したいのか?もともとを見てみると、ひとえに「死にたくないから」です。「死への恐怖」ですね。これこそ、西洋医学進歩の原動力だったとも言えます。そこで最後のテーマは④「死の恐怖を先制(予防)する」としました。私の在宅の経験では、この④が基にあって、その恐怖心に比例して①~③への熱量が上がると感じてきました。ですから、「がんを先制する」という大テーマの根源には「死への恐怖の克服」ではないかとさえ私は考えています。
 さて、前回までは、この①がんの初発予防②再発予防について一緒に見てきました。さらに今回が、再発予防してきたが、再発してしまった人のために、これ以上がんを大きくしたくない=進行させないためにどうしたら良いのか?というテーマに入りたく思いますが、まず今までの①初発予防②再発予防について簡単に振り返っておきましょう。

がんの初発を先制するとは?
 まず以下の図2をご覧ください。


図2 がんの初発、再発予防とは

 この初発予防に関しては、予防をしなくてはいけない理由や動機が不明確であることが多いですね。確かに身近に「がん」という言葉は聞いていても、物騒な響きだと思っていても、どこか自分とは無縁なんですね。ですから、健診やドックで「がん」と告げられると「えええ?何で、自分が?」と否定、ショックとなるわけです。勿論このショックの度合い、深さに比例して「治さなければ」という、その後のがん治療に向けた交渉力や実践力へ昇華されますから、あながちそのショックが悪くはありませんが。ですから、私が思う、がん初発の先制は、一言でいえば「強要」するしかない?と思っています。交通法規と同じで、事故に合わないようにするには、交通法規順守と罰則規定しかない。まさか自分が事故するとは思っていなので、事故ってこんなに怖いよ、痛いよ、悲しいよと映像を見せる。そして、違反したら罰金というように、がん予防もがんになる前に、ならないための生き方(五か条;良眠・良食・加温・運動・笑い)を励行する。罰則はないけど、あればよりがんは減ると思うんですが・・?
 エビデンスレベルでは、NK活性化する瞑想、森林浴、音楽など積極的に生活に取り入れるようにするんですね。しかし、がん初発の一番の問題は「自分は大丈夫」という根拠のない自信と、どこまでしていいのかの目安が不明という点、そしてただ普通に生きるだけでも、生活の中にストレスが渦巻いている事ではないでしょうか?そう、その結果、特に男性はタバコや飲酒が過多になりがちで、女性はついつい甘いもので肥満傾向となったりする。これらストレスの副産物こそががんの誘因であることは既にエビデンスがありますからね。さらに、加齢にともなってNK活性は落ちますから。
 本当は、このストレスが大きい人ほど常に「おお、今自分はがんになりつつある!」という認識をもってもらえれば良いのですが、得てして、そういう人ほどNKの活性を貶める生活習慣になりがちなんですよね。きっと「仕方ない!」と言い聞かせているんですね。
 そこに遺伝や年齢の要因もあって、結果的に2人に1人はがんが出るという統計になっている訳です。でもこれは見方によっては、その反対の2人に1人は出ていないと言える。私はこの両者の差はそれほどないんじゃないかと思っています。 
つまり、がんになるならないは「ちょっとした意識の差」だと思っています。

がんの再発を先制するとは?
 さあ、しかし、それでも「ちょっとした差」がかさむと、ある時がん宣告を受けることになるんですね。多くは突然、青天霹靂のようにです。
 ショックですね。がん=死だと思っていますから。
 でもね、この時に大事なことは、がん宣告=死ではないという事なんですね。今まで再三書いてきましたが、がんは「死ね」とは言ってないからです。
 がんの言い分はただ一つ。「変わりなさい!」でしたね。
 そうです。生き方の転換なんです。でも「え?何をどう変えるの?」と思うかもしれませんが、心配はご無用。あなたオリジナルのがんになる原因、理由があったんです。つまり、がんと診断される前の5~10年の自分の生活習慣を振り返れば良いんです。ここにがんの原因となる生き方があるんですね・・だからそしてなぜそうしたのか?この生き方を私は「がんになる生き方」と言っています。それをわかりやすく、5つの視点で顧みる。睡眠、食事、加温、運動、笑いですね。私はそれぞれ、自己採点で60点以上ならがんになっても治るようになっていますから大丈夫だと言っています。がん前はまず間違いなく皆さん点数が悪い。しかも皆さんその傾向は実に個性的。だから一律の予防なんてない。がん患者さんのがん前の生き方が悪ければ悪い程(点数が低い程)、ただそれを止めるだけ(止悪といいます)で点数が大幅に上がります。身体は、治る準備が始まったと私は言っています。つまり、がんが発生しても、それまでの生き方を反省し、止悪するだけで、身体は勝手に健康になろうとすると思ってほしいですね。
 一番治らないパターンは、自らに生き方を反省することなく、「先生、早く切って治してください。早く仕事に復帰しなくっちゃいけないんで・・」という人。その生き方ゆえ、がんが出たのに、同じ生き方を継続しようとしています。それじゃあがんの言い分は聴かれていないから治るはずがありません。それどころか、がんのさらなる言い分が「今のままじゃ、時間がないよ」=「死ぬよ」とも言っています。

再発を先制するのは反省
 さあ、再発を先制するにはどうしたらよいかのポイントはお判りでしょうか?一番重要な事は、がん前の生き方の反省です。なぜなら、そこにこそ、がんになった理由があり、それに気が付けば付くほどがんから離れることが出来るからなんですね。つまり、がん前にこそ、あなたオリジナルのがん治しのヒントが満載なんですね。がんと言われた人が、がんの前にどういう生き方をしてきたかを反省するのは凄く重要で、それをせずして生き方の転換は難しいし、これこそがんの言い分である以上、私はがんの再発の分岐点、分水嶺はこの「反省」にあると思っています。後悔ではありません。後悔はくよくよ思う事です。そんなこと言っても終わったことだから仕方ない。でも、今反省はその後の生き方への羅針盤となるんですね。

反省の行為としての禊の需要性
 さてここでとても重要な視点があります。それは禊(みそぎ)です。身削ぎ(みそぎ)とも言います。長年の悪しき習慣(とも本人は思っていませんが)の結果、できてしまったがん腫を削ぐ(減らす)行為ですね。30年の喫煙を今日やめたからと言って30年の痕跡(がん腫)は消えませんから。まさにこれこそ西洋医学の手術、放射線、抗がん剤(免疫療法含む)なんですね。ただ、手術、放射線は終了がありますが、抗がん剤だけはない。「死ぬまで続けます」と言う事もある。削る限界や目的をしっかり認識して、「自らの命ですからやめます」と言える勇気をもって、終えることが需要ですね。なんのための治療行為か?それは治ってしたいことをするためですから、削ることに必死になると、必ず死にます。自分の命を医師と言えども他者に預けない。自分の命の主人公は自分ですから。 
 その上で、私は手術、放射線、抗がん剤はとても有用な方法論の一つだと思っています。身削ぐ行為が確実にできるから。これを西洋医学的な治療行為と言いますが、実はこの治療行為は再発を先制(予防)するための行為とも言えるんですね。そして、再度の五カ条の見直し(反省)による新しい、あなたオリジナルの生き方がとても大事になるんですね。
 さて、ここで完全にがんの言い分が聴かれて、加えて、自分の本当にしたい事に気が付きそれに沿うという本来で本当の生き方を得た人は幸いです。そうした人は憑き物が取れたように笑顔が増え、軽くなり、なぜかよく泣かれる様になり、感謝の言葉が多く述べられるようになります。私はBig Reborn(ビックリボーン)と言っています。がんすら呼び捨てにせず、時に感謝すらされます。がんちゃんのお陰で気が付けたと。仲の良いご夫婦では、自らのがんに伴侶の名前を付けて呼ばれている人もいました。いい意味で夫唱婦随ですね。共存する相手だという事ですよ。
 しかし、人間とは同時に業もあるようで、のど元過ぎると熱さを忘れ、知らず知らずのうちに、少しくらいはいいだろうと以前のがん生活が始まる人もいるのです。
 当然、がん患者とは最初は正常細胞しかないところからがん細胞を作った経験者(前科者?)ですから、再度がんが知らせに登場する場合があります。私たちはそれを「再発」と言いますが。
 それをしてしまう人がいるんですね。そう再発した人はどうするのか?
 さて、今回はここからが本題です。

がんの進行を先制するとは?
 当然ですが、がんが再発したあとはそれ以上の進行を抑制したいのが人情ですね。ですから、がんの進行を先制(予防)するということですね。(図3)。


図3 がんの進行を先制(予防)するとは

 西洋医学的には、がん切除後の局所再発や諸々の遠隔転移(肝転移、肺転移、骨転移、腹膜播種など)のいわゆるステージ4、末期という状態が多いです。さあここで重要な事は、この時に伝えられる医師の言葉です。「余命3か月ですね」とか「あとは緩和ケアしかありません」など、まずはその言葉に飲まれない!ことです。医師には悪気はありません。過去のデータとして「正しい情報」を言ったまでなんです。ただし、問題がないわけではありません。まずは「西洋医学的には」という枕詞を忘れている。そして一番の問題は「医師である前に人であることを忘れている」と言う事。つまり、この内容が正しくとも言われた方がどう思い感じるかを慮(おもんばか)って言葉を選び伝えることが重要ではないかという事ですね。そう伝え方です。人としてです。そして、その上で私が大事にしている事は「励ます」という事です。なぜなら、ステージ4、余命宣告から生還した人がいるからです。
 私はそれをケリー・ターナーさんの本(図4)でご紹介しています。


図4 ケリー・ターナーさんの著書

 この本は既にお読みの方も多いと思いますが、簡単にご紹介いたしましょう。まず、図4左の「がんが自然に治る生き方」にはその表紙に「余命宣告から『劇的な寛解』に至った人たちが実践している9つのこと」がまとめてあります。1000人以上の余命宣告から寛解した人たちの心の持ち方から生活習慣までを全て書き出してもらったところ、寛解した全員が行っていた項目が9つあったというものです。誰もがこの9項目は最低実践していたという事です。
つまり、現在すでにがんで余命宣告を受けているあなたも、諦める必要はない!まずはこの9項目は実践することが治癒への第1歩になると言えるというのです。
この本は名著で、2014年に初めて読んだ私は感動のあまり、翌年2015年1月発行のこの通信に「新がん治療元年」とタイトルをつけ、この本をご紹介させてもらったほどです(フナクリ通信、バックナンバー2015年1~2月号)。
https://www.funacli.jp/wp/collumn/number/2015/150102.html
 実はその後、この本の続巻が出ました。そのタイトルは「がんが自然に治る10の習慣」で、前巻の9項目に1項目増えたことになります。その増えた項目は何かと言うと、「運動」だったんですね。実は前著にも「運動」は書かれてありましたが、寛解した全員ではなかったためあえて除いたと書かれています。そして、新著の9項目については、前著と比較して若干表現の違いはありますが、もろもろエビデンスの記載が深まっています。とりわけ運動の重要性が強調され、10項目の1番目に記載されました。確かに運動し、筋肉を増やすことががん予防や延命につながるというデータがどんどん増えエビデンスが高くなっています。手術後の合併症すら運動をすることで減ると分かってから、現在大学病院ではオペ前にジムへ行く指導が始まったくらいです。ケリー・ターナーさんは「運動を生涯の習慣にする」とまで書いています。

がんが治る10の習慣とは?
 さて、何であれ、この9~10項目こそが、「余命宣告」されても「寛解する」可能性のある項目だと言えますね。まずはそれを見てみましょう。
 この項目はまさにステージ4どころか末期宣告、余命宣告を受けてもなお身体は治るようになっている事を示した人たちが実践していた「生き方」であると言えますね。つまり、この生き方が出来ていないからこそ、がんが末期まで進行してしまったと言えます。
 ですから、この項目を反対に見れば、「がんになる生き方」であるとも言えますよね。それを私なりに書いてみました。あくまで個人的な考察です(図5)。


図5 がんが治る生き方の反対はがんができる生き方?

 これら項目では①②⑩は肉体的要件と言えますが、③⑤⑥⑦⑨は精神的要件、④と⑧は魂的要件と言えそうですね。きっとこの中ですぐにでも始めることが出来る項目が、①②⑩ですよね。がん前の食事(その結果栄養も不足?)、運動しない習慣が大きくがんを促していたというのは朗報ですよ。先にも書きましたが、がん前にこそ食事と運動のヒントがありますから、それを変えるだけで、間違いなくがんから離れることになります。しかし、精神的、魂的な項目は、どうしたらよいか?とまた思考が先立ちます。ですから、心の癖はまず気が付くことが大事だと私は思っています。そして、皆さん見られて意外と思われることは、どこにも「がんを消す」という手段が含まれないことですね。そうです、繋がるのは本来で本当の自分であり、それが深まれば深まるほどどうも勝手にがんは消えていくことになるようだという事なんですね。
 そうです、「がんは消すものではなく消えるものだ」という事だったんですね。
 詳細は著書をご覧くださいね。
 さて進行予防に同時に最近とても注目されているのが、1.温熱の持つ効果、2.運動の持つ効果(すでにケリー・ターナーさんの著書にて既出)、3.腸内細菌(腸活)の持つ効果、
4.大自然の持つ効果、5.音楽の持つ効果などです。
これらの働きは、主に私たちの①免疫②自律神経(主に副交感神経)③ホルモンを介してがんの抑制に寄与していると考えられています。これらはまた今後の別の機会でご紹介いたしましょうね。

その中で今回は、ちょうど当院で導入し、2025年1月から供用開始する高加温温熱治療器(ハイパーサーミア)について、丁度他誌ですが投稿依頼があったので、この文末にご紹介させてくださいね。 *「がんに克つ温め技とは」参照
 この装置が、クリニック北の心臓リハビリ施設「ココフィット」(図6)内に設置されました。この機械で当院のがん統合医療のスキルがより増強されたと思っています。


図6 統合医療センター心臓リハビリ施設「ココフィット」

 さて、次回はいよいよ④「がんの恐怖を先制する」です。がん=死という自然な連想があるから恐怖と言う感情が湧き出ますが、これをどう先制するのか?できるのか?について一緒に考えてみたく思います。

*がんに克つ温め技とは「統合医療でがんに克つ」クリピュア出版への投稿文
                               船戸崇史
 がんに克つ技の4つ目は「温め技」です(五か条の4つ目)。
 私も在宅医療の現場で、人間として生きる上での必須の生活サポートと言えば食べる事と排泄のサポートです。しかし、思いのほか喜ばれる在宅サービスが入浴です。自然災害の被災現場でも入浴するサービスが行われるのは日本くらいだと言われます。日本における入浴文化は、日本が雨水も多く水が潤沢にあり、よって湿度も高く身体を芯から温める方法として適している事、また火山国で温泉も身近にあった事なども関係していると言われています。何より、お風呂に入った時のあのほっこり感はシャワーでは感じられないリラックス(ストレス発散)効果として誰もが感じるのではないでしょうか。温熱には実はその他にも血流の改善、筋肉の緊張緩和、鎮痛効果、免疫賦活効果もあります。さらに、42.5度以上の高温では、直接がん細胞を死滅させる効果も分かってきました(図1)。また実はそこまで高温でなくとも42度以下での加温治療法(HSP温熱治療法)でもがん治療として有効であることもHSP研究者の伊藤要子先生らが詳細に研究し報告しています1)。


図1 加熱後の細胞生存曲線

 さて、今回はがんの温め技として、当院で導入しているこの両者を簡単にご紹介しましょう。
 まず、ハイパーサーミアですが、これはがん治療法としての温め技だと言えます。予防と言うより治療になりますが、実は同じ熱なのにマイルドと高温で働きに違いがあるのも興味深いですね。
 さて、ハイパーサーミアですが、8MHzの高周波を流し発生するジュール熱を利用した温熱治療器で体深部まで加温できることが特徴です。これにより、従来の体表からの温熱では届きにくかった熱が体深部に存在するがん腫や転移巣まで到達し、細胞内脂質や細胞内タンパク質、細胞のDNAを損傷する(2本鎖が1本鎖になる)ことで細胞死が誘発されると考えられています2)。
 しかし、この現象はがん細胞だけではなく正常細胞にも同様の変化が起きます。なぜがん細胞に特異的なのかというのは、がん腫はその血管もがん細胞で出来ており、熱により正常細胞の血管は拡張して熱をフラッシュアウトできる一方、がん腫の血管は拡張できず腫瘍内は鬱熱状態となり細胞内が高温になりやすいという仕組みがあることは皆さんもご存じの通りですね(松波総合病院HPより図2)。

              
図2 加熱後の細胞生存曲線

 さらに、本来発生するがん細胞がその場だけで大きく発育するなら実はそれほど問題なく切除もしやすいのですが、厄介な性格は「転移」という現象です。本来発生母地の上皮細胞には移動能力はないのに何らかの原因で細胞に遊走能が起こり転移するという性格(細胞の上皮間葉転換と言います)を獲得することが大きな問題と言えます。この上皮間葉転換には様々なシグナル誘発因子が必要となることが分かっており、その一つであるTGF-β1がこのハイパーサーミアにて抑制されることが分かってきました3)。つまりハイパーサーミアはがん細胞自体を死滅させるだけではなく、転移も抑制するという事が分かってきたのです。加えて、ハイパーサーミアは血管壁や細胞膜の透過性を亢進し抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤などの効果もより増強させることが分かってきました。つまり、総じて抗がん剤などの量を減量できることになります4)。またはその他、がん患者の痛みを緩和し、脳内ホルモンが増える、モルヒネを減量でき、抗がん剤による筋力低下が予防できるなどの報告があります。
 さらに大きいのは、保険が効くというところでしょう(ただし回数制限あり)。
 一方このハイパーサーミアは副作用が少なく安全性に優れていますが、注意すべき点がいくつかあります。
①熱傷;局所の熱傷、特に脂肪層の豊富な人は、熱傷による皮下硬結を訴える場合があります。
②脱水;大量の発汗による脱水も注意する必要があります。
③全身転移ある場合適応になりません。(局所療法の為)
④あまりに大きながん腫も全体にまんべんなく加熱が困難で不可もありますが要相談。
⑤意思疎通困難者(幼児、意識障害など)も適応になりません。
⑥心臓ペースメーカーやステントなど金属類が体内にある場合も不可能です。
 当院では2025年1月から供用開始いたしました。当院では庄内クリエート工業のアスクーフ8(図3)をクリニック北のココフィット内に設置しました。


図3 アスクーフ8(庄内クリエート工業)

 詳細は今までの「統合医療でがんに克つ」の特集で「低侵襲ながん治療、ハイパーサーミア2024年11号:VOL197」や、中村阪大名誉教授著の「副作用のないがん治療(太陽出版)」をぜひご参照頂きたく思います。 
 次にマイルド加温です。
 先にも書きましたが、マイルド加温は42度以下の温熱により、細胞に存在するHSP(Heat Shock Protin)を有効に増量する事を目的としています。一番の特徴は、加熱程度がマイルドであることから、ハイパーサーミアのような大きく高価な機械は必要なく、HSP研究の第一人者の伊藤先生は自宅の入浴法でこのHSPを増量する方法を研究で開発されました1)。
 伊藤先生は以下のように述べておられます。「HSPには、①生体防御作用(特にストレス防御作用)、②免疫増強作用(特にがん免疫を増強)、③抗炎症作用、④分子シャペロン作用(タンパク質の介添え役)等の生理作用があります。特に、がん患者さんは、免疫力が低下している上に、抗がん剤・放射線治療等で免疫力が低下するので、免疫力を増強するマイルド加温療法は基本的な治療法です。」
 現在当院で週2回、火曜と金曜に伊藤先生ご自身によるこのHSPマイルド加温を実施されています。
 特に自宅でも出来るという入浴法は手軽で(図4)、これにより免疫力がアップするので、当院のがん治療としてご協力いただいております。


図4 HSP入浴法 

「この入浴法は毎日行うのではなく、週2回程度であり、この入浴法により最もHSPが上昇するのは入浴後2日目です。よって、何かのイベントがあり、パフォーマンスを上げるべき日(抗がん剤治療、出張など)の2日前にこの入浴法を実施することが有効です」(伊藤先生談)。
 HSP入浴法は、その意味でどこでもだれでも安価にできる健康法であり生活術として、すばらしく重要だと思います。しかし、図らずもがんと診断されても、今度はマイルド加温しながらも、局所にハイパーサーミアという治療法としての加温を導入して「がんに克つ」を目指すことが重要だと思っています。
 最後に、当院で実施しているがん治療としてのハイパーサーミアとマイルド加温につき、比較表でまとめてみました(図5)。
 さて、今回は加温について見てきました。私は今まで見てきた、免疫を上げる生き方の中では加温の持つ役割は免疫を上げるアクセルだと思っています。つまり、食事や睡眠はまず身体をしっかり作りしっかり修復するという意味で自然治癒力の本体であり、笑いとは、それによってより免疫を上げる手段でありながらも最終的に自分らしく生き切った時の表情でもあると思っています。そうです、私は最期は笑って死にたいんですね。
 そしてまさにそれを推進するものが今回紹介しました加温であり、実は次回紹介する運動だと思っています。ですから、がん予防の観点からやはり通常はがん予防にもなる「HSP入浴を週2回」は生活に導入していただきたいですね。


図5 マイルド加温とハイパーサーミアとの比較

参考文献)
1)「ヒートショックプロテイン加温健康法」伊藤要子著:法研:2010
2)Cancer Res 64:8839-8845,2004
3)Clinical Biochem Nur 2014:55:56-61
4)Int J Hyperthermia 19886:2:369-378

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